大阪に限らず、看護師不足は全国的な問題で、いろいろな対策が講じられ始めています。新卒の看護師は毎年5万人のペースで増え続けているにもかかわらず、看護師不足なのは、高齢化の問題や地域偏在の問題があるにしても、看護師の離職率が高いことが一番の問題と考えられます。新卒の看護師の12%が1年以内に離職しているという数字がそれを示しています。
看護師の離職の原因は、業務の多忙、過酷な職場環境、ストレスなどいろいろ指摘されていますが、看護師の勤務形態と女性のライフサイクルのずれもその一つと言われています。
急性期病院では365日24時間体制のため、3交代または2交代といった勤務体制で、夜勤や休日出勤も欠かせません。こういう不規則な勤務体制では、恋愛や結婚は難しい。仮に結婚しても、子供ができるとこの勤務体制では子育ては無理なので、離職をして子育てに専念することになります。この女性のライフサイクルを重視して、ライフサイクルに沿った勤務を可能にしようとする試みが始まっています。
例えば、夜勤専従看護師の採用やパートタイマーや短時間勤務という勤務形態を導入して、勤務時間が原因の離職を減らすように努めています。
結婚・出産をしても勤務中病院から離職をしないように勤務形態を変えていくことができれば理想的ですが、現実問題としてまだまだ難しい面もあるようです。そういった場合、看護師の立場に立った考え方ですが、自分の生活環境にあった職場へ転職するのも一つの方法です。24時間体制の大きな病院ではなく、病床を持たない診療所やクリニックであれば、夜勤や休日勤務はありません。
介護施設や企業や学校の保健担当職員も勤務時間は規則的ですので、子育てや家事と仕事の両立は可能になります。他にも、看護師の資格を活かして活躍する場はたくさんあります。
仮に離職したとしても、子育てが一段落したら、やはり自分の能力を発揮できる場に看護師として復帰したいと考える人もいます。そのような人を受け入れる環境を整備していくことも、看護師不足解消のために重要です。
離職者の復職はけっして楽なことではありません。急性期病院では新技術や新しい知識が次々と取り入れられるため、しばらく離職していた人が追いつくのは至難の技です。そこで、慢性期病院や規模の小さな病院や診療所、あるいは訪問看護など、比較的復帰しやすい職場を選んだり、勤務形態を変えたりするなど、広い視野で職場を選択していけば復職しやすいようです。病院側も復職者が現役時代の勘を取り戻すまで、緩やかな勤務体制を取るなどの対応が重要となります。
うつ病や不安障害は近年、世界的に増加傾向にあります。その傾向は一般の人だけでなく、患者を治療する側の医療従事者にも当てはまります。メンタルヘルスに不調をもたらす原因はストレスですが、看護師不足による勤務状況の悪化がストレスの要因となっていますので、対策が必要です。医療従事者のためのメンタルヘルスの続きはこちら